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【子どものうつ病】

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小4〜中1で、「うつ」の子どもが、
4・2%もいるという。

このほど、北海道大学の研究
チームが、そんな調査結果を、
公表した。

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●子どものうつ病

 ものを書くときは、当然のことながら、(きっかけ)が、大切。きっかけがあってはじめて、もの
を書くことができる。

 それまでは、ただぼんやりとした状態がつづく。頭の中は、からっぽ。率直に言えば、考える
のも、めんどう。が、突然、頭の中で、何かが、ひらめく。キラリとひらめく。その(ひらめき)を感
じたら、それに向かって、書き始める。

 今は、「子どものうつ病」。

 少し前、・・・といっても、たった10年前には、子どものうつ病はないということになっていた。
「おかしいな?」と思いながら、当時、ある総合病院で、小児医科長をしていたドクターに、それ
について聞いたことがある。が、答は、同じ。「子どもに、うつ病はありません」と。

 そんなはずはない。たとえば学校恐怖症にしても、怠学にしても、子どもは、うつ病に似た症
状を示す。「うつ病」と診断しても、さしつかえないと思われる子どももいる。しかし、「子どもに、
うつ病はありません」とは? 

だからたとえば不登校児をもつ親に向かって、心の病気をにおわすようなことを口にするの
は、タブー中のタブー。そんなことを言えば、親たちが、反発した。ふつうの反発ではない。「う
ちの子が学校へ行けないのは、いじめが原因です!」と。

 もちろん(いじめ)が原因で学校へ行けなくなった子どもも多い。が、それ以上に多いのが、
心の病気で、学校へ行けなくなった子ども。うつ病もそのひとつ。学校恐怖症にしても、怠学に
しても、うつ病と区別するのは、むずかしい。印象に残っている子どもに、Sさん(私立高校1年
生、女子)という女の子がいた。

●Sさんのケース

 ある日、Sさんが、母親に連れられて、私の自宅にやってきた。幼児クラスで教えたことのあ
る子どもだった。そのSさんが、学校でいじめにあっているという。そのため、学校へ行けなくな
ってしまった、と。

 母親とSさんは、ことこまかく、いじめの内容について、私に説明した。

 Sさんとは、そのあと1年半近く、なんだかんだと、つきあった。そのSさん、印象的だったの
は、会うたびに、あれこれグチを並べたこと。それも一方的なグチ。時にそれが1時間以上も
つづいた。グチの内容が、会うたびに変化した。

たとえば最初は、「Xさんがいじめる」と言った。話を聞いていると、Xさんの行状を、ことこまかく
説明した。

 で、母親と相談し、ついで、母親が、学校側と相談した。学校側は、クラス変更に応じてくれ
た。が、しばらくすると、今度は、同じクラスのYさんの悪口を言い始めた。理由にもならない理
由を並べて、Yさんを非難した。

 「泥のついたテニスボールで、私にスマッシュをかけてきた」
 「掃除のとき、廊下の真中だけを掃除して、端のほうには、ゴミが残っていた」
 「先生が近くにいるときだけ、あいさつをすると返事をしてくれる。先生がいないと、私を無視
する」とか、など。

 Yさんと同じグループにいたこともある。「Yさんが、私に仕事を押しつけて、家に帰ってしまう」
「そのため、宿題をやる時間がなくなってしまう」というようなことを、言ったこともある。

 つまりひとつの問題が起きると、とことん、その問題にこだわる。しかしその問題が解決する
と、今度は、別の問題を持ちだす。が、その段階で、以前の問題は、ケロッと忘れてしまう。話
題にもならない。

あとは、この繰り返し。私はそのうち、Sさんが、本当の自分をごまかすために、そのつど、あ
れこれ、もっともらしい口実を並べているだけと気づいた。

 (本当の自分)・・・つまり、Sさんは、学校へ行きたくなかった。もっと言えば、心の内に潜む、
もっと大きな力によって、学校へ行くのをはばまれていた(行きたい)とか(行きたくない)という
レベルの話ではない。「行けない」のだ。しかし「行けない」という自分に心さえ、気づいていなか
った。

●北海道大学の調査結果

 このほど、北海道大学の研究チームが、こんな調査結果を公表した。何と、子どもの世界に
も、うつ病があるという! その調査結果で、何よりも驚いたのは、「子どものうつ病」という文
字が、前面に出てきたこと。これには驚いた。この言葉を口にするのは、先にも書いたように、
教育現場では、タブーとされていた。

 が、みなが内心では、「ある」と感じていた。「?」と思っていた。しかしだれも、それを口に出し
て言うことができなかった。私が驚いたのは、そのためである。

 子どもにも、うつ病はある。おとなに負けないほど(?)、立派なうつ病がある。こんなことは今
も昔も常識で、うつ病に、おとなも子どももない。聞いたところでは、犬やネコにもあるそうだ。

 要するに抑圧された精神状態が、慢性的につづくと、心だって風邪をひくということ。原因は
いろいろある。

 北海道大学の調査チームによれば、つぎのようになっている(小学4年〜中学1年の児童、
生徒、738人について、医師が面接方式で診断)。

 有病率では、中学1年(総数122人)で、10・7%! (10人に1人だぞ!) 研究チームの
一員である伝田准教授(北大・精神医学)ですら、「これほど高いとは驚きだ。これまでは子ど
ものうつは見過ごされてきたが、自殺との関係も深く、対策を真剣に考えていく必要がある」
(中日新聞)というコメントを寄せている。

 そのほかの数字は、つぎのようになっている。

 調査は、07年、4〜9月期に行われた。
 北海道内の小学4年から中学1年までの児童、計738人について、精神科医が各学校(小
学校8校、中学校2校)に直接出向き、問診調査。

 その結果、

 軽症のものも含め、うつ病と診断された児童……3・1%
             そううつ病と診断された児童……1・1%

 学年別では、小学4年生…… 1・6%
         小学6年生…… 4・2%
         中学1年生……10・7%

●家庭が原因

 子どものうつ病の原因は、ほぼまちがいなく家庭にあるとみる。さらに最近の研究報告によ
れば、5〜10歳までの離別体験が、うつ病の原因となりやすいという説もある(後述※)。つま
りそのころの家庭の(ひずみ)が、子どもの心に大きな影響を与えるという。

 が、問題はつづく。子どもがうつ病、もしくはうつ病に似た症状を示すと、親は一方的に、子ど
もに向かって、問題を解決しようとする。

 しかし子どもは、あくまでも(代表)にすぎない。子どもに何か問題が起きたら、親は、まず、
親自身、さらには家庭環境を疑ってみる。

 まだ、ある。

 かりに子どもがうつ病、もしくはうつ病に似た症状を示しても、家庭が家庭として機能していれ
ば、症状をその段階で、食い止めることができる。言うまでもなく、家庭の第一の役割は、(心
を休め、体を休める)こと。子どもは、(おとなもそうだが)、家庭で、心を休め、体を休めること
によって、心の疲れを癒すことができる。

●うつの診断

 うつ病といっても、うつ病特有の症状が5つ以上当てはまり、それらの症状が2週間以上つづ
く、「大うつ病(大うつ病性障害)」から、比較的症状の軽い、「小うつ(小うつ病性障害)」に区別
される。

 さらに軽症だが、症状が1年以上つづく、慢性の「気分変調性障害」もある(以上、中日新聞
記事より)。

 そううつ病は、双極性障害とも呼ばれ、うつ病期とそう病期を繰りかえす。なお厚生労働省研
究班の2004〜06年度の報告書によると、約2%が、過去1年に、大うつ病性障害を経験し
ているという(約4100人の地域住民について調査)。

 (東邦大学式抑うつ尺度、SRQ−D)によれば、つぎのようになっている。

++++++東邦大学式・うつ病・自己診断(Self-Rating Questionnaire)+++++++

【質問】

1、体がだるく、疲れやすいですか。
2、騒音が気になりますか。
3、最近、気が沈んだり気が重くなることがありますか。
4、音楽をきいて、楽しいですか。
5、朝のうち、とくに無気力ですか。
6、議論に熱中できますか。
7、首筋や肩がこってしかたないですか。
8、頭痛もちですか。
9、眠れないで、朝早く目覚めることがありますか。
10、事故やけがをしやすいですか。
11、食事がすすまず味がないですか。
12、テレビを見て楽しいですか。
13、息がつまって胸苦しくなることがありますか。
14、のどの奧に物がつかえている感じがしますか。
15、自分の人生がつまらなく感じますか。
16、仕事の能率があがらず何をするのもおっくうですか。
17、以前にも現在と似た症状がありましたか。
18、本来は仕事熱心で几帳面ですか。

 以上の項目について、

(いいえ)     ……0点
(ときどき、はい)……1点
(しばしば、はい)……2点
(常に、はい)  ……3点で、自己診断する。

合計点数が、10点以下……問題なし
      11〜15点……ボーダーライン
      16点以上……軽いうつ病の疑い。

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 この自己診断で、高得点だからといって、うつ病ということにはならない。自己診断というの
は、そういう点では、主観(思いこみ)に左右されやすい。あると言えばあるし、ないと言えばな
い。高得点の人は、「一応、その疑いがある」というふうに考えたらよいのではないか。

 子どもについて言うなら、ここに書いてあるような症状が、日常的に見られるようであれば、う
つ病を疑ってみるということになる。

●家庭内暴力

 子どものうつ病にからんで問題となるのが、家庭内暴力である。それについて、02年に書い
た原稿があるので、それをここに掲載する。

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家庭内暴力について

●思春期の不安

 思春期の不安感は、大きく分類すると、つぎのように分けられる。

抑うつ気分(気分が晴れない)、悲哀感(何を見ても聞いても悲しい)、絶望感、自信喪失、自
責感(自分はダメな人間と思い込む)、罪責感(罪の意識を強くもつ)など。これらが高じると、
集団に対する不適応症状(不登校、怠学)、厭世気分(生きていることが無意味と思う)感情の
鈍化、感情のコントロール不能(激怒、キレる)などの症状が現れる。

 またその前の段階として、軽い不安症状にあわせて、心の緊張感がほぐれない、焦燥感(あ
せり)などの症状にあわせて、ものごとに対して突発的に攻撃的になったり、イライラしたりする
こともある。(こうした攻撃性が、ときにキレる状態になり、凶暴的、かつ破滅的な行為に及ぶこ
ともある。)

●行為障害としての家庭内暴力

 こうした症状は、思春期の子どもなら、多かれ少なかれ共通してもつ症状といってもよい。
が、その症状が一定レベルを超え、子ども自身の処理能力を超えたとき、さまざまな障害とな
って、発展的に現れる。それらを大きく分けると、思考障害、感情障害、行為障害、精神障害、
身体的障害の五つになる。

 思考障害……ふつう思考障害というときは、思考の停止(考えが袋小路に入ってしまう)、混
乱(わけがわからなくなる)、集中力の減退(考え方が散漫になってしまう)、想像および創造力
の減退(アイデアが思い浮かばない)、記憶力の低下(英語の単語が覚えられない)、決断力
の不足(グズグズした感じになる)、反応力の衰退(話しかけても、反応が鈍い)などをいう。

 感情障害……感情障害の最大の特徴は、自分の感情を、理性でコントロールできないこと。
「自分ではわかっているのだが……」という状態のまま、激怒したり、突発的に暴れたりする。
こうした状態を、「そう状態における錯乱状態」と考える学者もいる。ただ私は、この「自分では
わかっているのだが……」という点に着目し、精神の二重構造性を考える。コンピュータにたと
えていうなら、暴走するプログラムと、それを制御しようとするCPU(中央演算装置)が、同時に
機能している状態ということになる。(実際には、コンピュータ上では、こういうことはありえない
が……。)

この時期の子どもは、感情障害を起こしつつも、もう一人の自分が別にいて、それをコントロー
ルするという特徴がある。その一例として、家庭内暴力を起こす子どもは、(1)暴力行為の範
囲を家庭内でとどめていること。また(2)暴力行為も、(事件になるような特別なケースは別と
して)、最終的な危害行為(それ以上したら、家庭そのものが破滅する行為のこと。

私はこれを「最終的危害行為」と呼んでいる)に及ぶ、その直前スレスレのところで抑制するこ
とがある。家庭内暴力を起こす子どもが、はげしい暴力を起こしながらも、どこか自制的なの
は、そのためと考える。

行為障害……軽度のばあいは、生活習慣の乱れ(起床時刻や就眠時刻が守れない)、生活
態度の乱れ(服装がだらしなくなる)、義務感の喪失(やるべきことをしない)、怠惰、怠学(無気
力になり、無意味なサボり方をする)などの症状が現れる。が、それが高ずると、社会的機能
が影響を受け、集団非行、万引き、さらには回避性障害(他人との接触を嫌い、部屋に引きこ
もる)、摂食障害(拒食症、過食症など)を引き起こすようになる。この段階で、家人は異変に
気づくことが多いが、この状態を放置すると、厭世気分が高じて、自殺願望(「死にたい」と思
う)、自殺企画(自殺方法を考える)、最終的には自殺行為に及ぶこともある。

精神障害……うつ状態が長期化すると、感情の鈍化(喜怒哀楽の情が消える)、無反応性(話
しかけてもボーッとしている)が現れる。一見痴呆症状に似ているので、痴呆症と誤解するケー
スも多い。しかし実際には、ほとんどのケースでは、本人自身が、自分の症状を自覚している
ことが多い。これを「病識(自分で自分の症状を的確に把握している)」という。ある青年は、中
学時代、家庭内暴力を起こしていたときのことについて、こう言った。「いつももう一人の自分
がそこにいて、そんなバカなことをするのをやめろと叫んでいたような気がする。しかしいった
ん怒り始めると、それにブレーキをかけることができなくなってしまった」と。

ほかにもう一つ、腹痛や頭痛などの身体的障害もあるが、一般的な病状と区別しにくいので、
ここでは省略する。

●情緒不安

 よく誤解されるが、情緒が不安定な状態を、情緒不安というのではない。情緒不安というの
は、心の緊張感がとれない状態をいう。「気を許さない」「気を抜かない」「気をゆるめない」とい
う状態を考えればよい。

その緊張しているところに、不安要素が入り込むと、その不安を解消しようと、一挙に心の緊
張感が高まる。このタイプの子どもは、どこか神経がピリピリしていて、心を許さない。そのこと
は軽く抱いてみればわかる。心を許さない分だけ、体をこわばらせたり、がんこな様子で、それ
を拒絶したりする。情緒が不安定になるのは、あくまでもその結果でしかない。

 家庭内暴力を繰り返す子どもは、基本的には、この情緒が不安定な状態にあると考えるとわ
かりやすい。そのためたいていは(親側からみれば)ささいな親の言動で、子どもは突発的に
凶暴になり、攻撃的な暴力を繰り返す。ある女子(中2)は、母親がガラガラとガラス戸を閉め
ただけで、母親を殴ったり、蹴ったりした。母親には理由がわからなかったが、その女子はあと
になってこう言った。「ガラス戸をしめられると、『もっと勉強しなさい』と、催促をされているよう
な気がした」と。

その女子の家は大通りに面していて、ふだんから車の騒音が絶えなかった。それで子どものと
きから、母親はその女子に「勉強しなさい」と言ったあと、いつもそのガラス戸をガラガラとしめ
ていた。母親としては、その女子の部屋を静かにしてあげようと思ってそうしていたのだが、い
つの間にか、それがその女子には「もっと勉強しなさいという催促」と聞こえるようになった……
らしい。

●暴力行為

 家庭内暴力の「暴力」は、その家人にとってはまさに想像を絶するものである。またそれだけ
に深刻な問題となる。その家庭内暴力に、私がはじめて接したケースに、こんなのがある。

 浜松市に移り住むようになってしばらくのこと。私は親類の女性に頼まれて、1人の中学3年
生男子を私のアパートで、個人レッスンをすることになった。「夏休みの間だけ」という約束だっ
た。が、教えて始めてすぐ、その中学生は、おとなしく従順だったが、まさに「何を考えているか
わからないタイプの子ども」ということがわかった。

勉強をしたいのか、したくないのか。勉強をしなければならないと思っているのか、思っていな
いのか。どの程度まで教えてほしいのか、教えてほしくないのか。それがまったくわからなかっ
た。心と表情が、完全に遊離していて、どんな性格なのかも、つかめなかった。

 が、その少年は、家庭の中で、激しい暴力行為を繰り返していた。その少年が暴力行為を繰
り返すようになると、母親は仕事をやめ、父親も出張の多いそれまでの仕事をやめ、地元の電
気会社に就職していた。そういう事実からだけでも、その少年の家庭内暴力がいかに激しかっ
たかがわかる。

その少年を紹介してくれた親類の女性はこう言った。「毎晩、動物のうめき声にも似た少年の
絶叫が、道をへだてた私の家まで聞こえてきました。その子どもが暴れ始めると、父親も母親
も、廊下をはって歩かねばならなかったそうです」と。

私は具体的な話を聞きながら、最初から最後まで、自分の耳を疑った。私が知るその少年
は、「わけのわからない子ども」ではあったが、家の中で、そのような暴力を働いているとは、と
ても思えない子どもだったからである。

●心の病気

 こうした抑うつ感が、うつ病につながるということはよく知られている。一般には家庭内暴力を
起こす子どもは、うつ病であると言われる。おとなでも、うつ病患者が突発的にはげしい暴力行
為を繰り返すことは、よく知られている。が、家庭内暴力を起こす子どもがすべて、うつ病かと
いうと、それは言えない。症状としては重なる部分もあるというだけかもしれない。

たとえば学校恐怖症というのがあるが、どこまでが恐怖症で、どこからがうつ病なのか、その
線を引くのがむずかしい。少なくとも、教育の現場では、その線を引くことができない。同じよう
に、家庭内暴力を起こす子どもと、うつ病との間に、線を引くことはむずかしい。そこで比較的
研究の進んでいる、うつ病についての資料を拾ってみる。(というのも、家庭内暴力という診断
名はなく、そのため、治療法もないということになっているので……。)

 村田豊久氏という学者らが調査したところによると、日本においては、小学2年生から6年生
までの1041人の子どもについて調べたところ、約13・3%に「うつ病とみなしてよいとの評点
を、得点していた」(89年)という。もちろんこの中には、偽陽性者(症状としてうつ病に似た症
状を訴えても、うつ病でない子ども)も含まれているので、13・3%の子どもがすべてがうつ病と
いうことにはならない。

最近の調査研究では、学童全体の約1・8%、思春期の学童の約4・7%が、うつ病ということ
になっている(長崎医大調査)。

が、この数字も、注意してみなければならない。「うつ病」と診断されるほどのうつ病でなくても、
それ以前の軽度、中度のうつ病も含めるとどうなるかという問題がある。さらに、うつ病もふく
めて、こうした情緒障害には、周期性、反復性がある。数週間単位で、症状が軽減したり、重く
なったりすることもある。そういう子どもはどうするかという問題もある。が、それはさておき、こ
こでいう「4・7%」というのは、おおむね、「今という時点において、中学生の約20人に1人が、
うつ病である」と考えてよい数字ということになる。

 で、この数字を多いとみるか、少ないとみるかは、別として、こうした子どもたちが、一方で不
登校や引きこもり(マイナス型)を起こし、また一方で家庭内暴力を起こす(プラス型)、その予
備軍と考えてよい。(あるいは実際、すでに起こしている子どもも含まれる。)

で、ここで問題は、二つに分かれる。(1)どうすれば、家庭内暴力も含めて、どうすれば子ども
のうつ病を避けることができるか。(2)今、家庭内暴力を起こしている子どもも含めて、どういう
子どもには、どう対処したらよいか。

●どうすれば防げるか 

 「すなおな子ども」というとき、私たちは昔風に、従順で、おとなの言うことをハイハイと聞く子
どもを想像する。しかしこれは、誤解。

教育の世界で、「すなおな子ども」というときには、二つの意味がある。一つは、心の状態と表
情が一致していること。悲しいときには悲しそうな顔をする。うれしいときにはうれしそうな顔を
する、など。が、それが一致しなくなると、いわゆる心と表情の「遊離」が始まる。不愉快に思っ
ているはずなのに、ニコニコと笑ったりするなど。

 もう一つは、「心のゆがみ」がないこと。いじける、ひがむ、つっぱる、ひねくれるなどの心の
ゆがみがない子どもを、すなおな子どもという。心がいつもオープンになっていて、やさしくして
あげたり、親切にしてあげると、それがそのままスーッと子どもの心の中にしみこんできくのが
わかる。が、心がゆがんでくると、どこかでそのやさしさや親切がねじまげられてしまう。私「こ
のお菓子、食べる?」、子、「どうせ宿題をさせたいのでしょう」と。

 ついでに、子どもの心は風船玉のようなもの。「家庭」で圧力を加えると、「園や学校」で荒れ
る。反対に「園や学校」で圧力を加えると、「家庭」で荒れる。友人との「外の世界」で荒れること
もある。問題は、荒れることではなく、こうした子どもたちが、いわゆる仮面をかぶり、二重人格
性をもつことだ。親の前では、恐ろしくよい子ぶりながら、その裏で、陰湿な弟や妹いじめを繰
り返す、など。家庭内暴力を起こす子どもなどは、外の世界では、信じられないほど、よい子を
演ずることが多い。

●こわい遊離と仮面

 一般論として、情意(心)と表情が遊離し始めると、心に膜がかかったかのようになる。教える
側から見ると、「何を考えているかわからない子ども」、親から見ると、「ぐずな子ども」ということ
になる。あるいは「静かで、おとなしい子ども」という評価をくだすこともある。

ともかくも心と表情が、ミスマッチ(遊離)するようになる。ブランコを横取りされても、笑みを浮
かべながら渡す。失敗して皆に笑われているようなときでも、表情を変えず平然としている、な
ど。「ふつうの子どもならこういうとき、こうするだろうな」という自然さが消える。が、問題はそれ
で終わらない。

 このタイプの子どもは、表情のおだやかさとは別に、その裏で、虚構の世界を作ることが多
い。作るだけならまだしも、その世界に住んでしまう。ゲームのキャラクターにハマりこんでしま
い、現実と空想の区別がつかなくなってしまう、など。ある中学生は、毎晩、ゲームで覚えた呪
文を、空に向かって唱えていた。「超能力をください」と。あるいはものの考え方が極端化し、先
鋭化することもある。異常な嫉妬心や自尊心をもつことも多い。

 原因の多くは、家庭環境にある。威圧的な過干渉、権威主義的な子育て、親のはげしい情
緒不安、虐待など。異常な教育的過関心も原因になることがある。子どもの側からみて、息を
抜けない環境が、子どもの心をゆがめる。子どもは、先ほども書いたように、一見「よい子」に
なるが、それはあくまでも仮面。この仮面にだまされてはいけない。こうした仮面は、家庭内暴
力を繰り返す子どもに、共通して見られる。

 子どもの心を遊離させないためにも、子育ては、『まじめ8割、いいかげん2割』と覚えておく。
これは車のハンドルの遊びのようなもの。子どもはこの「いいかげんな部分」で、羽をのばし、
自分を伸ばす。が、その「いいかげん」を許さない人がいる。許さないというより、妥協しない。
外から帰ってきたら、必ず手洗いさせるとか、うがいさせるなど。

このタイプの親は、何ごとにつけ完ぺきさを求め、それを子どもに強要する。そしてそれが子ど
もの心をゆがめる。が、悲劇はまだ続く。このタイプの親に限って、その自覚がない。ないばか
りか、自分は理想的な親だと思い込んでしまう。中には父母会の席などで、堂々とそれを誇示
する人もいる。

 なお子どもの二重人格性を知るのは、それほど難しいことではない。園や学校の参観日に行
ってみて、家庭における子どもと、園や学校での子どもの「違い」を見ればわかる。もしあなた
の子どもが、家庭でも園や学校でも、同じようであれば、問題はない。しかし園や学校では、別
人のようであれば、ここに書いた子どもを疑ってみる。そしてもしそうなら、心の開放を、何より
も大切にする。一人静かにぼんやりとできる時間を大切にする。

●前兆症状に注意

 子どもの心の変化を、的確にとらえることによって、子どもの心の病気を未然に防ぐことがで
きる。私なりに、チェック項目を考えてみた。

○ときどきもの思いに沈み、ふきげんな表情を見せる(抑うつ感)
○意味もなく悲しんだり、感傷的になって悲嘆する(悲哀感)
○「さみしい」「ひとりぼっち」という言葉を、ときどきもらす(孤独感)
○体の調子が悪いとか、勉強が思い通りに進まないとこぼす(不調感)
○「どうせ自分はダメ」とか、「未来は暗い」などと考えているよう(悲観)
○何をするにも、自信がなく、自らダメ人間であると言う(劣等感)
○好きな番組やゲームのはずなのに、突然ポカンとそれをやめてしまう(感情の喪失)
○ちょっとしたことで、カッと激怒したり、人が変わったようになる(緊張感)
○イライラしたり、あせったりして、かえってものごとが手につかないよう(焦燥感)
○ときどき苦しそうな表情をし、ため息をもらうことが多くなった(苦悶)
○同じことを堂々巡りに考え、いつまでもクヨクヨしている(思考の渋滞)
○考えることをやめてしまい、何か話しかけても、ただボーッとしている(思考の停止)
○何かの行動をすることができず、決断することができない(優柔不断)
○ワークなど、問題集を見ているはずなのに、内容が理解できない(集中困難)
○「自分はダメだ」「悪い人間だ」と、自分を責める言動がこのところ目立つ(自責感)
○「生きていてもムダ」「どうせ死ぬ」と、「死」という言葉が多くなる(希死願望)
○行動力がなくなり、行動半径も小さくなる。友人も極端に少なくなる(活動力低下)
○動きが鈍くなり、とっさの行動ができなくなる。動作がノロノロする(緩慢行動)
○ブツブツと独り言をいうようになる。意味のないことを口にする(内閉性)
○行動半径が小さくなり、行動パターンも限られてくる(寡動)
○独りでいることを好み、家族の輪の中に入ろうとしない(孤立化)
○何をしても、時間ばかりかかり、前に進まない(作業能率の低下)
○具体的に死ぬ方法を考え出したり、死後の世界を頭の中で描くようになる(自殺企画)

こうした前兆症状を繰り返しながら、子どもの心は、本来あるべき状態から、ゆがんだ状態へ
と進んでいく。

●家庭内暴力の特徴

 家庭内暴力といわれる暴力には、ほかには見られない特徴がいくつかある。

(1)区域限定的
 家庭内暴力は、その名称のとおり、「家庭内」のみにおいて、なされる。これは子どもの側か
らみて、自己の支配下のみで、かつ自己の抑制下でなされることを意味する。その暴力が、家
庭を離れて、学校や社会、友人の世界で起こることはない。

(2)最終的危害行為にまでは及ばない
 子どもは、自分ができる、またできるギリギリのところまでの暴力を繰り返すが、その一線を
越えることはない。(たまに悲惨な事件がマスコミをにぎわすが、ああいったケースはむしろ例
外で、ほとんどのばあい、子ども自身が、暴力をどこかで抑制する。)どこか子ども自身が、「こ
こまでは許される」というような冷静な判断をもちつつ、暴力を繰り返す。

これを私は「精神の二重構造性」と呼んでいる。

言いかえると、これを反対にうまく利用して、子どもの心に訴えるという方法もある。私もよく、
そういう家庭の中に乗り込んでいって、子どもと対峙したことがある。そういうとき、もう一方の
冷静な子どもがいることを想定して、つまりその子どもに話しかけるようにして、諭すという方法
をとる。「これは暴れる君ではない。もう一人の君だ。わかるかな。本当の君だよ。本当の君
は、やさしくて、もう一人の君を嫌っているはずだ。そうだろ?」と。大切なことは、決して子ども
を袋小路に追い込まないこと。励ましたり、脅したりするのは、タブー中のタブー。

(3)計算された恐怖
 
子どもが暴力を振るう目的は、親や兄弟に、恐怖を与えること。その恐怖を与えることによっ
て、相手を自分の支配下に置こうとする。方法としては、暴力団の構成員が、恐怖心を相手に
与えて、自分の優位性を誇示しているのに似ている。そしてその恐怖は、計算されたもの。決
して突発的、偶発的なものではない。

繰り返すが、ここが、子どもがほかで見せる暴力とは違うところ。妄想性を帯びることもある
が、たとえば分裂病患者がもつような、非連続的な妄想や、了解不能な妄想をもつことはな
い。このタイプの子どもは、どうすれば相手が自分の暴力に恐怖を覚え、自分に屈服するかを
計算しながら、行動する。そういう意味では、「依存」と「甘え」が混在した、アンビバレンツ(両
価的)な状態ということになる。

●家庭内暴力には、どう対処するか

 家庭内暴力に対処するには、いくつかの鉄則がある。

(1)できるだけ初期の段階で、それに気づく

家庭内暴力が家庭内暴力になるのは、初期の段階での不手際、家庭教育の失敗によるとこ
ろが大きい。子どもが荒れ始めると、親はこの段階で、説教、威圧、暴言、暴力を使って子ど
もを抑えようとする。体力的にもまだ親のほうが優勢で、一時はそれで収まる様子を見せるこ
とが多い。しかしこうした無理や強制は、それがたとえ一時的なものであっても、子どもの心に
は取り返しがつかないほどのキズを残す。このキズが、その後、家庭内暴力を、さらに凶暴な
ものにする。

(2)「直そう」とか、「治そう」と思わないこと

一度、悪循環に入ると、「以前のほうが、まだ症状が軽かった」ということを繰り返しながら、あ
とはドロ沼の悪循環におちいる。この悪循環の「輪」に入ると、あとは何をしても裏目、裏目と
出る。子どもの心の問題というのは、そういうもので、たとえばこれは非行の例だが、「門限を
過ぎても帰ってきた、そこで親は強く叱る」→「外泊する。そこで親は強く叱る」→「家出を繰り返
す、そこで親は強く叱る」→「年上の男性(女性)と、同棲生活を始める、そこで親は強く叱る」
→「性病になったり、妊娠したりする……」という段階を経て、状態は、どんどんと悪化する。

そこで大切なことは、一度、こうした空回り(悪循環と裏目)を感じたら、「今の状態をそれ以上
悪くしないこと」だけを考えて、親は子どもの指導から思い切って手を引く。「直そう」とか、「治
そう」と思ってはいけない。つまり子どもの側からみて、子どもを束縛していたものから子どもを
解き放つ。(親にはその自覚がないことが多い。)その時期は早ければ早いほどよい。また子
どもの症状は、数か月、半年、あるいは一年単位で観察する。一時的な症状の悪化、改善
に、一喜一憂しないのがコツ。

(3)愛情の糸は切らない

 家庭内暴力は、あくまでも「心の病気」。そういう視点で対処する。脳そのものが、インフルエ
ンザにかかったと思うこと。熱病で、苦しんでいる子どもに、勉強などさせない。ただ脳がインフ
ルエンザにかかっても、外からその症状が見えない。だから親としては、子どもの病状がつか
みにくいが、しかし病気は病気。そういう視点で、いつも子どもをみる。無理をしてはいけない。
無理を求めてもいけない。

この時点で重要なことは、「どんなことがあっても、私はあなたを捨てません」「あなたを守りま
す」という親の愛情を守り抜くこと。ここに書いたように、これはインフルエンザのようなもの。本
当のインフルエンザのように、数日から一週間で治るということはないが、しかし必ず、いつか
治る。(治らなかった例はない。症状がこじれて長期に渡った例や、副次的にいろいろな症状
を併発した例はある。)必ず治るから、そのときに視点を置いて、「今」の状態をみる。この愛
情さえしっかりしていれば、子どもの立ち直りも早いし、予後もよい。あとで笑い話になるケース
すらある。

(4)心の緊張感をほぐす

 一般の情緒不安と同じに考え、心の緊張感をほぐすことに全力をおく。そのとき、何が、「核」
になっているかを、知ることが大切。多くは、将来への不安や心配が核になっていることが多
い。自分自身がもつ学歴信仰や、「学校へは行かねばならないもの」という義務感が、子ども
自らを追い込むこともある。よくあるケースとしては、子どもの心を軽減しようとして、「学校へは
行かなくてもいい」と言ったりすると、かえって暴力がはげしくなることがある。子ども自身の葛
藤に対しては、何ら解決にはならないからである。

 だいたい親自身も、それまで学歴信仰を強く信奉するケースが多い。子どもはそれを見習っ
ているだけなのだが、親にはその自覚がない。意識もない。子どもが家庭内暴力を起こした段
階でも、「まともに学校へ行ってほしい」「高校くらいは出てほしい」と願う親は多い。が、それも
限界を超えると、そのときはじめて親は、「学校なんかどうでもいい」と思うようになるが、子ども
はそれほど器用に自分の考えを変えることができない。そこで葛藤することになる。「どんどん
自分がダメになる」という恐怖の中で、情緒は一挙に不安定になる。

 ただ症状が軽いばあいは、子どもが学校へ行きやすい環境を用意してあげることで、暴力行
為が軽減することがある。A君は、夏休みの間、断続的に暴力行為を繰り返していたが、母親
が一緒になって宿題を片づけてやったところ、その暴力行為は停止した。このケースでも、子
ども自身が、自分を追い込んでいたことがわかる。

(5)食生活の改善

 家庭内暴力とはやや、内容を異にするが、「キレる子ども」というのがいる。そのキレる子ども
について、最近にわかにクローズアップされてきたのが、「セロトニン悪玉説」である。つまり脳
間伝達物質であるセロトニンが異常に分泌され、それが毒性をもって、脳の抑制命令を狂わ
すという(生化学者、ミラー博士ほか)。

アメリカでは、「過剰行動児」として、もう20年以上も前から指摘されていることだが、もう少し
具体的に言うとこうだ。たとえば白砂糖を多く含む甘い食品を、一時的に過剰に摂取すると、イ
ンスリンが多量に分泌され、それがセロトニンの過剰分泌を促す。そしてそれがキレる原因と
なるという(岩手大学の大沢博名誉教授や大分大学の飯野節夫教授ほか)。

 このタイプの子どもは、独特の動き方をするのがわかっている。ちょうどカミソリの刃でスパス
パとものを切るように、動きが鋭くなる。なめらかな動作が消える。そしていったん怒りだすと、
カッとなり、見境なく暴れたり、ものを投げつけたりする。ギャーッと金切り声を出すことも珍しく
ない。幼児でいうと、突発的にキーキー声を出して、泣いたり、暴れたりする。興奮したとき、体
を小刻みに震わせることもある。

 そこでもしこういう症状が見られたら、まず食生活を改善してみる。甘い食品を控え、カルシ
ウム分やマグネシウム分の多い食生活に心がける。リン酸食品も控える。リン酸は日もちをよ
くしたり、鮮度を保つために多くの食品に使われている。リン酸をとると、せっかく摂取したカル
シウムをリン酸カルシウムとして、体外へ排出してしまう。一方、昔からイギリスでは、『カルシ
ウムは紳士をつくる』という。日本でも戦前までは、カルシウムは精神安定剤として使われてい
た。

それはともかくも、子どもから静かな落ち着きが消えたら、まずこのカルシウム不足を疑ってみ
る。ふつう子どものばあい、カルシウムが不足してくると、筋肉の緊張感が持続できず、座って
いても体をクニャクニャとくねらせたり、ダラダラさせたりする。

 これはここにも書いたように、キレる子どもへの対処法のひとつだが、家庭内暴力を繰り返
す子どもにも有効である。

 最後に家庭内暴力を起こす子どもは、一方で親の溺愛、あるいは育児拒否などにより、情緒
的未熟性が、その背景にあるとみる。親は突発的に変化したと言うが、本来子どもというの
は、その年齢ごとに、ちょうど昆虫がカラを脱ぐように、段階的に成長する。

その段階的な成長が、変質的な環境により、阻害されたためと考えられる。よくあるケースは、
幼児期から少年少女期にかけて、「いい子」で過ごしてしまうケース。こうした子どもが、それま
で脱げなかったカラを一挙に脱ごうとする。それが家庭内暴力の大きな要因となる。そういう意
味では、家庭内暴力というのは、もちろん心理的な分野からも考えられなければならないが、
同時に、家庭教育の失敗、あるいは家庭教育のひずみの集大成のようなものとも考えられ
る。子どもだけを一方的に問題にしても意味はないし、また何ら解決策にはならない。

(以上、未完成ですが、また別の機会に補足します。)
(02−9−1)※

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●子どものうつには、休養

 子どもがうつ状態、もしくはうつ病的症状を見せたら、鉄則は、ただひとつ。休養、あるのみ。
しかもそれには、半年〜1年単位の休養が必要である。が、これは子どもの問題というより、
親の問題と考えてよい。

 たとえば学習面においても、1年単位の休養が必要である。しかしそれを親に納得させるの
は、むずかしい。「それでは受験にまにあわない」「受験競争から脱落してしまう」と。そして結
果的に、行き着くところまで、行く。またそこまで行かないと、親も気づかない。

 が、コツがないわけではない。子どもが過負担によるうつ症状を見せたら、『負担は、少しず
つ減らす』(後述、参考)など 。急にすべてを減らすと、あとあと立ちなおりが、むずかしくな
る。それについても、以前、いろいろな原稿を書いてきた。もしあなたの子どもが、うつ的な症
状を見せたら、ここに書いたことを参考に、子どもを包む家庭環境を、猛省してみてほしい。

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子どもを無気力から回復させるための30の鉄則

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●強化の原理

子どもが、何かの行動をしたとする。そのとき、その行動について、何か、よいことが起きたと
する。ほめられるとか、ほうびがもらえるとか。あるいは心地よい感覚に包まれるとか。そういう
何かよいことが起こるたびに、その行動は、ますます強化される。これを「強化の原理」という。
子どもの能力をのばすための大鉄則ということになる。


●弱化の原理

強化の原理に対して、弱化の原理がある。何か、行動をしたとき、つまずいたり、失敗したり、
叱られたりすると、子どもは、やる気をなくしたり、今度は、その行動を避けるようになる。これ
を弱化の原理という。子どもにもよるし、ケースにもよるが、一度弱化の原理が働くようになる
と、学習効果が、著しく落ちるようになる。


●内面化

子どもは成長とともに、身長がのび、体重が増加する。これを外面化というのに対して、心の
発達を、内面化という。その内面化は、(1)他者との共鳴性(自己中心性からの脱却)、(2)自
己管理能力、(3)良好な人間関係をみるとよい(EQ論)。ほかに道徳規範や倫理観の発達、
社会規範や、善悪の判断力などを、ふくめる。心理学の世界では、こうした発達を総称して、
「しつけ」という。


●子どもの意欲

子どもは、親、とくに母親の意欲を見ながら、自分の意欲を育てる。一般論として、意欲的な母
親の子どもは、意欲的になる。そうでない母親の子どもは、そうでない。ただし、母親が意欲的
過ぎるのも、よくない。昔から、『ハリキリママのションボリ息子』と言われる。とくに子どもに対し
ては、ほどよい親であることが望ましい。任すところは子どもに任せ、一歩退きながら、暖かい
無視を繰りかえす。それが子育てのコツということになる。


●ほどよい目標

過負担、過剰期待ほど、子どもを苦しめるものはない。そればかりではない。自信喪失から、
やる気をなくしてしまうこともある。仮に一時的にうまくいっても、オーバーヒート現象(燃え尽き
症候群、荷卸し症候群)に襲われることもある。子どもにとって重要なことは、達成感。ある程
度がんばったところで、「できた!」という喜びが、子どもを伸ばす。子どもには、ほどよい目標
をもたせるようにする。


●子どもの恐怖症

恐怖症といっても、内容は、さまざま。対人恐怖症、赤面恐怖症、視線恐怖症、体臭恐怖症、
醜形恐怖症、吃音恐怖症、動物恐怖症、広場恐怖症、不潔恐怖症、高所恐怖症、暗所恐怖
症、閉所恐怖症、仮面恐怖症、先端恐怖症、水恐怖症、火恐怖症、被毒恐怖症、食事恐怖症
などがある。子どもの立場になって、子どもの視線で考えること。「気のせいだ」式の強引な押
しつけは、かえって症状を悪くするので注意。


●子どもの肥満度

児童期の肥満度は、(実測体重Kg)÷(実測身長cmの3乗)×10の7乗で計算する。この計
算式で、値が160以上を、肥満児という(ローレル指数計算法)。もっと簡単に見る方法として
は、手の甲を上にして、指先を、ぐいと上にそらせてみる。そのとき、指のつけねに腱が現れる
が、この腱の部分にくぼみが現れるようになったら、肥満の初期症状とみる。この方法は、満5
歳児〜の肥満度をみるには、たいへん便利。


●チック

欲求不満など、慢性的にストレスが蓄積すると、子どもは、さまざまな神経症的症状を示す。た
とえば爪かみ、指しゃぶり、夜尿、潔癖症、手洗いグセなど。チックもその一つ。こうした症状を
総称して、神経性習癖という。このチックは、首から上に出ることが多く、「おかしな行動をす
る」と感じたら、このチックをうたがってみる。原因の多くは、神経質で、気が抜けない家庭環境
にあるとみて、猛省する。
(はやし浩司 子供の肥満 肥満度 子どもの肥満)

 
●伸びたバネは、ちぢむ

受験期にさしかかると、猛烈な受験勉強を強いる親がいる。塾に、家庭教師に、日曜特訓な
ど。毎週、近くの公園で、運動の特訓をしていた父親さえいた。しかしこうした(無理)は、一事
的な効果はあっても、そのあと、その反動で、かえって子どもの成績はさがる。『伸びたバネは
ちぢむ』と覚えておくとよい。イギリスの教育格言にも、『馬を水場に連れていくことはできても、
水を飲ませることはできない』というのがある。その格言の意味を、もう一度、考えてみてほし
い。


●「利他」度でわかる、人格の完成度

あなたの子どもの前で、重い荷物をもって、苦しそうに歩いてみてほしい。そのとき、「ママ、も
ってあげる!」と走りよってくればよし。反対に、知らぬ顔をして、テレビゲームなどに夢中にな
っていれば、あなたの子どもは、かなりのどら息子と考えてよい。子どもの人格(おとなも!)、
いかに利他的であるかによって、知ることができる。つまりドラ息子は、それだけ人格の完成
度の低い子どもとみる。勉強のできる、できないは、関係ない。


●見栄、体裁、世間体

私らしく生きるその生き方の反対にあるのが、世間体意識。この世間体に毒されると、子ども
の姿はもちろんのこと、自分の姿さえも、見失ってしまう。そしてその幸福感も、「となりの人よ
り、いい生活をしているから、私は幸福」「となりの人より悪い生活をしているから、私は不幸」
と、相対的なものになりやすい。もちろん子育ても、大きな影響を受ける。子どもの学歴につい
て、ブランド志向の強い親は、ここで一度、反省してみてほしい。あなたは自分の人生を、自分
のものとして、生きているか、と。


●私を知る

子育ては、本能ではなく、学習である。つまり今、あなたがしている子育ては、あなたが親から
学習したものである。だから、ほとんどの親は、こう言う。「頭の中ではわかっているのですが、
ついその場になると、カッとして……」と。そこで大切なことは、あなた自身の中の「私」を知るこ
と。一見簡単そうだが、これがむずかしい。ギリシアのターレスもこう言っている。『汝自身を、
知れ』と。哲学の究極の目標にも、なっている。


●成功率(達成率)は50%

子どもが、2回トライして、1回は、うまくいくようにしむける。毎回、成功していたのでは、子ども
も楽しくない。しかし毎回失敗していたのでは、やる気をなくす。だから、その目安は、50%。
その50%を、うまく用意しながら、子どもを誘導していく。そしていつも、何かのレッスンの終わ
りには、「ほら、ちゃんとできるじゃ、ない」「すばらしい」と言って、ほめて仕あげる。


●無理、強制

無理(能力を超えた負担)や強制(強引な指導)は、一時的な効果はあっても、それ以上の効
果はない。そればかりか、そのあと、その反動として、子どもは、やる気をなくす。ばあいによっ
ては、燃え尽きてしまったり、無気力になったりすることもある。そんなわけで、『伸びたバネ
は、必ず縮む』と覚えておくとよい。無理をしても、全体としてみれば、プラスマイナス・ゼロにな
るということ。


●条件、比較

「100点取ったら、お小遣いをあげる」「1時間勉強したら、お菓子をあげる」というのが条件。
「A君は、もうカタカナが読めるのよ」「お兄ちゃんが、あんたのときは、学校で一番だったのよ」
というのが、比較ということになる。条件や比較は、子どもからやる気を奪うだけではなく、子ど
もの心を卑屈にする。日常化すれば、「私は私」という生き方すらできなくなってしまう。子ども
の問題というよりは、親自身の問題として、考えたらよい。(内発的動機づけ)


●方向性は図書館で

どんな子どもにも、方向性がある。その方向性を知りたかったら、子どもを図書館へ連れてい
き、一日、そこで遊ばせてみるとよい。やがて子どもが好んで読む本が、わかってくる。それが
その子どもの方向性である。たとえばスポーツの本なら、その子どもは、スポーツに強い関心
をもっていることを示す。その方向性がわかったら、その方向性にそって、子どもを指導し、伸
ばす。


●神経症(心身症)に注意

心が変調してくると、子どもの行動や心に、その前兆症状として、変化が見られるようになる。
「何か、おかしい?」と感じたら、神経症もしくは、心身症を疑ってみる。よく知られた例として
は、チック、吃音(どもり)、指しゃぶり、爪かみ、ものいじり、夜尿などがある。日常的に、抑圧
感や欲求不満を覚えると、子どもは、これらの症状を示す。こうした症状が見られたら、(親
は、子どもをなおそうとするが)、まず親自身の育児姿勢と、子育てのあり方を猛省する。


●負担は、少しずつ減らす

子どもが無気力症状を示すと、たいていの親は、あわてる。そしていきなり、負担を、すべて取
り払ってしまう。「おけいこごとは、すべてやめましょう」と。しかしこうした極端な変化は、かえっ
て症状を悪化させてしまう。負担は、少しずつ減らす。数週間から、1、2か月をかけて減らす
のがよい。そしてその間に、子どもの心のケアに務める。そうすることによって、あとあと、子ど
もの立ちなおりが、用意になる。

●荷おろし症候群

何かの目標を達成したとたん、目標を喪失し、無気力状態になることを言う。有名高校や大学
に進学したあとになることが多い。燃え尽き症候群と症状は似ている。一日中、ボーッとしてい
るだけ。感情的な反応も少なくなる。地元のS進学高校のばあい、1年生で、10〜15%の子
どもに、そういう症状が見られる(S高校教師談)とのこと。「友人が少なく、人に言われていや
いや勉強した子どもに多い」(渋谷昌三氏)と。


●回復は1年単位

一度、無気力状態に襲われると、回復には、1年単位の時間がかかる。(1年でも、短いほうだ
が……。)たいていのばあい、少し回復し始めると、その段階で、親は無理をする。その無理
が、かえって症状を悪化させる。だから、1年単位。「先月とくらべて、症状はどうか?」「去年と
くらべて、症状はどうか?」という視点でみる。日々の変化や、週単位の変化に、決して、一喜
一憂しないこと。心の病気というのは、そういうもの。


●前向きの暗示を大切に

子どもには、いつも前向きの暗示を加えていく。「あなたは、明日は、もっとすばらしくなる」「来
年は、もっとすばらしい年になる」と。こうした前向きな暗示が、子どものやる気を引き起こす。
ある家庭には、4人の子どもがいた。しかしどの子も、表情が明るい。その秘訣は、母親にあ
った。母親はいつも、こうような言い方をしていた。「ほら、あんたも、お兄ちゃんの服が着られ
るようになったわね」と。「明日は、もっといいことがある」という思いが、子どもを前にひっぱっ
ていく。


●未来をおどさない

今、赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起こす子どもがふえている。おとなになることに、ある
種の恐怖感を覚えているためである。兄や姉のはげしい受験勉強を見て、恐怖感を覚えるこ
ともある。幼児のときにもっていた、本や雑誌、おもちゃを取り出して、大切そうにそれをもって
いるなど。話し方そのものが、幼稚ぽくなることもある。子どもの未来を脅さない。


●子どもを伸ばす、三種の神器

子どもを伸ばす、三種の神器が、夢、目的、希望。しかし今、夢のない子どもがふえた。中学
生だと、ほとんどが、夢をもっていない。また「明日は、きっといいことがある」と思って、一日を
終える子どもは、男子30%、女子35%にすぎない(「日本社会子ども学会」、全国の小学生3
226人を対象に、04年度調査)。子どもの夢を大切に、それを伸ばすのは、親の義務と、心
得る。

 
●受験は淡々と

子ども(幼児)の受験は、淡々と。合格することを考えて準備するのではなく、不合格になったと
きのことを考えて、準備する。この時期、一度、それをトラウマにすると、子どもは生涯にわた
って、自ら「ダメ人間」のレッテルを張ってしまう。そうなれば、大失敗というもの。だから受験
は、不合格のときを考えながら、準備する。


●比較しない

情報交換はある程度までは必要だが、しかしそれ以上の、深い親どうしの交際は、避ける。で
きれば、必要な情報だけを集めて、交際するとしても、子どもの受験とは関係ない人とする。
「受験」の魔力には、想像以上のものがある。一度、この魔力にとりつかれると、かなり精神的
にタフな人でも、自分で自分を見失ってしまう。気がついたときには、狂乱状態に……というこ
とにも、なりかねない。


●「入試」「合格・不合格」は、禁句

子どもの前では、「受験」「入試」「合格」「不合格」「落ちる」「すべる」などの用語を口にするの
は、タブーと思うこと。入試に向かうとしても、子どもに楽しませるようなお膳立ては、必要であ
る。「今度、お母さんがお弁当つくってあげるから、いっしょに行きましょうね」とか。またそういう
雰囲気のほうが、子どもも伸び伸びとできる。また結果も、よい。


●入試内容に迎合しない

たまに難しい問題が出ると、親は、それにすぐ迎合しようとする。たとえば前年度で、球根の名
前を聞かれるような問題が出たとする。するとすぐ、親は、「では……」と。しかし大切なことは、
物知りな子どもにすることではなく、深く考える子どもにすることである。わからなかったら、す
なおに「わかりません」と言えばよい。試験官にしても、そういうすなおさを、試しているのであ
る。


●子どもらしい子ども

子どもは子どもらしい子どもにする。すなおで、明るく、伸びやかで、好奇心が旺盛で、生活力
があって……。すなおというのは、心の状態と、表情が一致している子どもをいう。ねたむ、い
じける、すねる、ひねくれるなどの症状のない子どもをいう。そういう子どもを目指し、それでダ
メだというのなら、そんな学校は、こちらから蹴とばせばよい。それくらいの気構えは、親には
必要である。


●デマにご用心

受験期になると、とんでもないデマが飛びかう。「今年は、受験者数が多い」「教員と親しくなっ
ておかねば不利」「裏金が必要」などなど。親たちの不安心理が、さらにそうしたデマを増幅さ
せる。さらに口から口へと伝わっていく間に、デマ自身も大きくなる。こういうのを心理学の世界
でも、「記憶錯誤」という。子どもよりも、おとなのほうが、しかも不安状態であればあるほど、そ
の錯誤が大きくなることが知られている。


●上下意識は、もたない

兄(姉)が上で、弟(妹)が下という、上下意識をもたない。……といっても、日本人からこの意
識を抜くのは、容易なことではない。伝統的に、そういう意識をたたきこまれている。今でも、長
子相続を本気で考えている人は多い。もしあなたがどこか権威主義的なものの考え方をしてい
るようなら、まず、それを改める。


●子どもの名前で、子どもを呼ぶ

「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」ではなく、兄でも、姉でも、子ども自身の名前で、子どもを呼ぶ。た
とえば子どもの名前が太郎だったら、「太郎」と呼ぶ。一般的に、たがいに名前で呼びあう兄弟
(姉妹)は、仲がよいと言われている。


●差別しない

長男、長女は、下の子が生まれたときから、恒常的な愛情不足、欲求不満の状態に置かれ
る。親は「平等」というが、長男、長女にしてみれば、平等ということが、不平等なのである。そ
ういう前提で、長男(長女)の心理を理解する。つまり長男(長女)のほうが、不平等に対して、
きわめて敏感に反応しやすい。


●嫉妬はタブー

兄弟(姉妹)の間で、嫉妬感情をもたせない。これは子育ての鉄則と考えてよい。嫉妬は、確
実に子どもの心をゆがめる。原始的な感情であるがゆえに、扱い方もむずかしい。この嫉妬
がゆがむと、相手を殺すところまでする。兄弟(姉妹)を別々に扱うときも、たがいに嫉妬させな
いようにする。


●たがいを喜ばせる

兄弟を仲よくさせる方法として、「たがいを喜ばせる」がある。たとえばうち1人を買い物に連れ
ていったときでも、「これがあると○○君、喜ぶわね」「△△ちゃん、喜ぶわね」というような買い
与え方をする。いつも相手を喜ばすようにしむける。これはたがいの思いやりの心を育てるた
めにも、重要である。


●決して批判しない

子どもどうしの悪口を、決して言わない。聞かない。聞いても、判断しない。たとえば兄に何か
問題があっても、それを絶対に(絶対に)、弟に告げ口してはいけない。告げ口した段階で、あ
なたと兄の関係は、壊れる。反対に兄が弟のことで、何か告げ口をしても、あなたは聞くだけ。
決して相づちを打ったり、いっしょになって、兄を批判してはいけない。


●得意面をさらに伸ばす

子どもを伸ばすコツは、得意面をさらに伸ばし、不得意面については、目を閉じること。たとえ
ば受験生でも、得意な英語を伸ばしていると、不得意だった数学も、つられるように伸び始め
るということがよくある。「うちの子は、運動が苦手だから、体操教室へ……」という発想は、そ
もそも、その発想からしてまちがっている。子どもは(いやがる)→(ますます不得意になる)の
悪循環を繰りかえすようになる。


●悪循環を感じたら、手を引く

子育てをしていて、どこかで悪循環を感じたら、すかさず、その問題から、手を引く。あきらめ
て、忘れる。あるいはほかの面に、関心を移す。「まだ、何とかなる」「そんなハズはない」と親
ががんばればがんばるほど、話が、おかしくなる。深みにはまる。が、それだけではない。一
度、この悪循環に入ると。それまで得意であった分野にまで、悪影響をおよぼすようになる。自
信喪失から、自己否定に走ることもある。


●子どもは、ほめて伸ばす

『叱るときは、陰で。ほめるときは、みなの前で』は、幼児教育の大鉄則。もっとはっきり言え
ば、子どもは、ほめて伸ばす。仮にたどたどしい、読みにくい文字を書いたとしても、「ほほう、
字がじょうずになったね」と。こうした前向きの強化が、子どもを伸ばす。この時期、子どもは、
ややうぬぼれ気味のほうが、あとあと、よく伸びる。「ぼくはできる」「私はすばらしい」という自
信が、子どもを伸ばす原動力になる。


●孤立感と劣等感に注意

家族からの孤立、友だちからの孤立など。子どもが孤立する様子を見せたら、要注意。「ぼく
はダメだ」式の劣等感を見せたときも、要注意。この二つがからむと、子どものものの考え方
は、急速に暗く、ゆがんでくる。外から見ると、「何を考えているかわからない」というようになれ
ば、子どもの心は、かなり危険な状態に入ったとみてよい。家庭教育のあり方を、猛省する。


●すなおな子ども

従順で、親の言うことをハイハイと聞く子どもを、すなおな子どもというのではない。幼児教育の
世界で、「すなおな子ども」というときは、心(情意)と、表情が一致している子どもをいう。感情
表出がすなおにできる。うれしいときは、顔満面にその喜びをたたえるなど。反対にその子ども
にやさしくしてあげると、そのやさしさが、スーッと子どもの心の中に、しみこんでいく感じがす
る。そういう子どもを、すなおな子どもという。


●自己意識を育てる
乳幼児期に、何らかの問題があったとする。しかしそうした問題に直面したとき、大切なこと
は、そうした問題にどう対処するかではなく、どうしたら、こじらせないか、である。たとえばAD
HD児にしても、その症状が現れてくると、たいていの親は、混乱状態になる。しかし子どもの
自己意識が育ってくると、子どもは、自らをコントロールするようになる。そして見た目には、症
状はわからなくなる。無理をすれば、症状はこじれる。そして一度、こじれると、その分だけ、立
ちなおりが遅れる。


●まず自分を疑う

子どもに問題があるとわかると、親は、子どもをなおそうとする。しかしそういう視点では、子ど
もは、なおらない。たとえばよくある例は、親の過干渉、過関心で、子どもが萎縮してしまったよ
うなばあい。親は「どうしてうちの子は、ハキハキしないのでしょう」と言う。そして子どもに向か
っては、「どうしてあなたは、大きな声で返事ができないの!」と叱る。しかし原因は、親自身に
ある。それに気づかないかぎり、子どもは、なおらない。


●「やればできるはず」は禁句

たいていの親は、「うちの子は、やればできるはず」と思う。しかしそう思ったら、すかさず、「や
ってここまで」と思いなおす。何がそうかといって、親の過関心、過負担、過剰期待ほど、子ども
を苦しめるものはない。それだけではない。かえって子どもの伸びる芽をつんでしまう。そこで
子どもには、こう言う。「あなたは、よくがんばっているわよ。TAKE IT EASY!(気を楽にし
てね)」と。


●「子はかすがい」論
たしかに子どもがいることで、夫婦が力を合わせるということはよくある。夫婦のきずなも、そ
れで太くなる。しかしその前提として、夫婦は夫婦でなくてはならない。夫婦関係がこわれかか
っているか、あるいはすでにこわれてしまったようなばあいには、子はまさに「足かせ」でしかな
い。日本には『子は三界の足かせ』という格言もある。


●「親のうしろ姿」論

生活や子育てで苦労している姿を、「親のうしろ姿」という。日本では『子は親のうしろ姿を見て
育つ』というが、中には、そのうしろ姿を子どもに見せつける親がいる。「親のうしろ姿は見せ
ろ」と説く評論家もいる。しかしうしろ姿など見せるものではない。(見せたくなくても、子どもは
見てしまうかもしれないが、それでもできるだけ見せてはいけない。)恩着せがましい子育て、
お涙ちょうだい式の子育てをする人ほど、このうしろ姿を見せようとする。


●「親の威厳」論

「親は威厳があることこそ大切」と説く人は多い。たしかに「上」の立場にいるものには、居心地
のよい世界かもしれないが、「下」の立場にいるものは、そうではない。その分だけ、上のもの
の前では仮面をかぶる。かぶった分だけ、心を閉じる。威厳などというものは、百害あって一
利なし。心をたがいに全幅に開きあってはじめて、「家族」という。「親の権威」などというのは、
封建時代の遺物と考えてよい。


●「育自」論は?

よく、「育児は育自」と説く人がいる。「自分を育てることが育児だ」と。まちがってはいないが、
子育てはそんな甘いものではない。親は子どもを育てながら、幾多の山を越え、谷を越えてい
る間に、いやおうなしに育てられる。育自などしているヒマなどない。もちろん人間として、外の
世界に大きく伸びていくことは大切なことだが、それは本来、子育てとは関係のないこと。子育
てにかこつける必要はない。


●「親孝行」論

安易な孝行論で、子どもをしばってはいけない。いわんや犠牲的、献身的な「孝行」を子どもに
求めてはいけない。強要してはいけない。孝行するかどうかは、あくまでも子どもの問題。子ど
もの勝手。親子といえども、その関係は、一対一の人間関係で決まる。たがいにやさしい、思
いやりのある言葉をかけあうことこそ、大切。親が子どものために犠牲になるのも、子どもが
親のために犠牲になるのも、決して美徳ではない。親子は、あくまでも「尊敬する」「尊敬され
る」という関係をめざす。

●「産んでいただきました」論

よく、「私は親に産んでいただきました」「育てていただきました」「言葉を教えていただきました」
と言う人がいる。それはその人自身の責任というより、そういうふうに思わせてしまったその人
の周囲の、親たちの責任である。日本人は昔から、こうして恩着せがましい子育てをしながら、
無意識のうちにも、子どもにそう思わせてしまう。いわゆる依存型子育てというのが、それ。


●「水戸黄門」論に注意

日本型権威主義の象徴が、あの「水戸黄門」。あの時代、何がまちがっているかといって、身
分制度(封建制度)ほどまちがっているものはない。その身分制度(=巨悪)にどっぷりとつか
りながら、正義を説くほうがおかしい。日本人は、その「おかしさ」がわからないほどまで、この
権威主義的なものの考え方を好む。葵の紋章を見せつけて、人をひれ伏せさせる前に、その
矛盾に、水戸黄門は気づくべきではないのか。仮に水戸黄門が悪いことをしようとしたら、どん
なことでもできる。ご注意!


●「釣りバカ日誌」論

男どうしで休日を過ごす。それがあのドラマの基本になっている。その背景にあるのが、「男は
仕事、女は家庭」。その延長線上で、「遊ぶときも、女は関係なし」と。しかしこれこそまさに、世
界の非常識。オーストラリアでも、夫たちが仕事の同僚と飲み食い(パーティ)をするときは、妻
の同伴が原則である。いわんや休日を、夫たちだけで過ごすということは、ありえない。そんな
ことをすれば、即、離婚事由。「仕事第一主義社会」が生んだ、ゆがんだ男性観が、その基本
にあるとみる。


●「MSのおふくろさん」論

夜空を見あげて、大のおとなが、「ママー、ママー」と泣く民族は、世界広しといえども、そうはい
ない。あの歌の中に出てくる母親は、たしかにすばらしい人だ。しかしすばらしすぎる。「人の傘
になれ」とその母親は教えたというが、こうした美化論にはじゅうぶん注意したほうがよい。マザ
コン型の人ほど、親を徹底的に美化することで、自分のマザコン性を正当化する傾向がある。


●「かあさんの歌」論

窪田S氏作詞の原詩のほうでは、歌の中央部(三行目と四行目)は、かっこ(「」)つきになって
いる。「♪木枯らし吹いちゃ冷たかろうて。せっせと編んだだよ」「♪おとうは土間で藁打ち仕
事。お前もがんばれよ」「♪根雪もとけりゃもうすぐ春だで。畑が待ってるよ」と。しかしこれほ
ど、恩着せがましく、お涙ちょうだいの歌はない。親が子どもに手紙を書くとしたら、「♪村の祭
に行ったら、手袋を売っていたよ。あんたに似合うと思ったから、買っておいたよ」「♪おとうは
居間で俳句づくり。新聞にもときどき載るよ」「♪春になったら、村のみんなと温泉に行ってくる
よ」だ。


●「内助の功」論

封建時代の出世主義社会では、『内助の功』という言葉が好んで用いられた。しかしこの言葉
ほど、女性を蔑視した言葉もない。どう蔑視しているかは、もう論ずるまでもない。しかし問題
は、女性自身がそれを受け入れているケースが多いということ。約23%の女性が、「それでい
い」と答えている※。決して男性だけの問題ではないようだ。
※……全国家庭動向調査(厚生省98)によれば、「夫も家事や育児を平等に負担すべきだ」と
いう考えに反対した人が、23・3%もいることがわかった。


 ●子育ては、考えてするものではない

だれしも、「頭の中では、わかっているのですが、ついその場になると……」と言う。子育てとい
うのは、もともと、そういうもの。そこでいつも同じようなパターンで、同じような失敗をするとき
は、(1)あなた自身の過去を冷静に見つめてみる。(2)何か(わだかまり)や(こだわり)があれ
ば、まず、それに気づく。あとは時間が解決してくれる。


●子育ては、世代連鎖する

子育ては、世代を超えて、親から子へと、よいことも、悪いことも、そのまま連鎖する。またそう
いう部分が、ほとんどだと考えてよい。そういう意味で、「子育ては本能ではなく、学習によるも
の」と考える。つまり親は子育てをしながら、実は、自分が受けた子育てを、無意識のうちに繰
りかえしているだけだということになる。そこで重要なことは、悪い子育ては、つぎの世代に、残
さないということ。これを昔の人、『因を断つ』と言った。


●子育ての見本を見せる

子育ての重要な点は、子どもを育てるのではなく、子育てのし方の見本を、子どもに見せると
いうこと。見せるだけでは、足りない。子どもを包む。幸福な家庭というのは、こういうものだ。
夫婦というのは、こういうものだ。家族というのは、こういうものだ、と。そういう(学習)があっ
て、子どもは、親になったとき、はじめて、自分で子育てが自然な形でできるようになる。


●子どもには負ける

子どもに、勝とうと思わないこと。つまり親の優位性を見せつけないこと。どうせ相手にしてもし
かたないし、本気で相手にしてはいけない。ときに親は、わざと負けて見せたり、バカなフリをし
て、子どもに自信をもたせる。適当なところで、親のほうが、手を引く。「こんなバカな親など、ア
テにならないぞ」「頼りにならない」と子どもが思うようになったら、しめたもの。


●子育ては重労働

子育ては、もともと重労働。そういう前提で、考える。自分だけが苦しんでいるとか、おかしいと
か、子どもに問題があるなどと、考えてはいけない。しかしここが重要だがが、そういう(苦し
み)をとおして、親は、ただの親から、真の親へと成長する。そのことは、子育てが終わってみ
ると、よくわかる。子育ての苦労が、それまで見えなかった、新しい世界を親に見せてくれる。
子育ての終わりには、それがやってくる。どうか、お楽しみに!


●自分の生きザマを!

子育てをしながらも、親は、親で、自分の生きザマを確立する。「あなたはあなたで、勝手に生
きなさい。私は私で、勝手に生きます」と。そういう一歩退いた目が、ともすればギクシャクとし
がちな、親子関係に、風を通す。子どもだけを見て、子どもだけが視野にしか入らないというの
は、それだけその人の生きザマが、小さいということになる。あなたはあなたで、したいことを、
する。そういう姿が、子どもを伸ばす。


●問題のない子育てはない

子育てをしていると、子育てや子どもにまつわる問題は、つぎからつぎへと、起きてくる。それ
は岸辺に打ち寄せる波のようなもの。問題のない子どもはいないし、したがって、問題のない
子育ては、ない。できのよい子ども(?)をもった親でも、その親なりに、いろいろな問題に、そ
のつど、直面する。できが悪ければ(?)、もっと直面する。子育てというのは、もともとそういう
もの。そういう前提で、子育てを考える。


●解決プロセスを用意する

英文を読んでいて、意味のわからない単語にぶつかったら、辞書をひく。同じように、子育てで
何かの問題にぶつかったら、どのように解決するか、そのプロセスを、まず、つくっておく。兄弟
や親類に相談するのもよい。親に相談するのも、よい。何かのサークルに属するのもよい。自
分の身にまわりに、そういう相談相手を用意する。が、一番よいのは、自分の子どもより、2、
3歳年上の子どもをもつ、親と緊密になること。「うちもこうでしたよ」というアドバイスをもらっ
て、たいていの問題は、その場で解決する。


●動揺しない
株取引のガイドブックを読んでいたら、こんなことが書いてあった。「プロとアマのちがいは、プ
ロは、株価の上下に動揺しないが、アマは、動揺する。だからそのたびに、アマは、大損をす
る」と。子育ても、それに似ている。子育てで失敗しやすい親というのは、それだけ動揺しやす
い。子どもを、月単位、半年単位で見ることができない。そのつど、動揺し、あわてふためく。こ
の親の動揺が、子どもの問題を、こじらせる。


●自分なら……

賢い親は、いつも子育てをしながら、「自分ならどうか?」と、自問する。そうでない親は親意識
だけが強く、「〜〜あるべき」「〜〜であるべきでない」という視点で、子どもをみる。そして自分
の理想や価値観を、子どもに押しつけよとする。そこで子どもに何か問題が起きたら、「私なら
どうするか?」「私はどうだったか?」という視点で考える。たとえば子どもに向かって「ウソをつ
いてはダメ」と言ったら、「私ならどうか?」と。


●時間を置く

葉というのは、耳に入ってから、脳に届くまで、かなりの時間がかかる。相手が子どもなら、な
おさらである。だから言うべきことは言いながらも、効果はすぐには、求めない。また言ったか
らといって、それですぐ、問題が解決するわけでもない。コツは、言うべきことは、淡々と言いな
がらも、あとは、時間を待つ。短気な親ほど、ガンガンと子どもを叱ったりするが、子どもはこ
わいから、おとなしくしているだけ。反省などしていない。


●叱られじょうずな子どもにしない

親や先生に叱られると、頭をうなだれて、いかにも叱られていますといった、様子を見せる子ど
もがいる。一見、すなおに反省しているかのように見えるが、反省などしていない。こわいから
そうしているだけ。もっと言えば、「嵐が通りすぎるのを待っているだけ」。中には、親に叱られ
ながら、心の中で歌を歌っていた子どももいた。だから同じ失敗をまた繰りかえす。


●叱っても、人権を踏みにじらない

先生に叱られたりすると、パッとその場で、土下座をしてみせる子どもがいる。いわゆる(叱ら
れじょうずな子ども)とみる。しかしだからといって、反省など、していない。そういう形で、自分
に降りかかってくる、火の粉を最小限にしようとする。子どもを叱ることもあるだろうが、しかし
どんなばあいも、最後のところでは、子どもの人権だけは守る。「あなたはダメな子」式の、人
格の「核」攻撃は、してはいけない。


●子どもは、親のマネをする

たいへん口がうまく、うそばかり言っている子どもがいた。しかしやがてその理由がわかった。
母親自身もそうだった。教師の世界には、「口のうまい親ほど、要注意」という、大鉄則があ
る。そういう親ほど、一度、敵(?)にまわると、今度は、その数百倍も、教師の悪口を言い出
す。子どもに誠実になってほしかったら、親自身が、誠実な様子を、日常生活の中で見せてお
く。


●一事が万事論

あなたは交通信号を、しっかりと守っているだろうか。もしそうなら、それでよし。しかし赤信号
でも、平気で、アクセルを踏むようなら、注意したほうがよい。あなたの子どもも、あなたに劣ら
ず、小ズルイ人間になるだけ。つまり親が、小ズルイことをしておきながら、子どもに向かって、
「約束を守りなさい」は、ない。ウソはつかない。約束は守る。ルールには従う。そういう親の姿
勢を見ながら、子どもは、(まじめさ)を身につける。


●代償的過保護に注意
「子どもはかわいい」「私は子どもを愛している」と、豪語する親ほど、本当のところ、愛が何で
あるか、わかっていない。子どもを愛するということは、それほどまでに、重く、深いもの。中に
は、子どもを自分の支配下において、自分の思いどおりにしたいと考えている親もいる。これを
代償的過保護という。一見、過保護に見えるが、その基盤に愛情がない。つまりは、愛もどき
の愛を、愛と錯覚しているだけ。


●子どもどうしのトラブルは、子どもに任す

子どもの世界で、子どもどうしのトラブルが起きたら、子どもに任す。親の介入は、最小限に。
そういうトラブルをとおして、子どもは、子どもなりの問題解決の技法を身につけていく。親とし
てはつらいところだが、1にがまん、2にがまん。親が口を出すのは、そのあとでよい。もちろん
子どものほうから、何かの助けを求めてきたら、そのときは、相談にのってやる。ほどよい親で
あることが、よい親の条件。


●許して忘れ、あとはあきらめる

子どもの問題は、許して、忘れる。そしてあとはあきらめる。「うちの子にかぎって……」「そんな
はずはない」「まだ何とかなる」と、親が考えている間は、親に安穏たる日々はやってこない。そ
こで「あきらめる」。あきらめると、その先にトンネルの出口を見ることができる。子どもの心に
も風が通るようになる。しかしヘタにがんばればがんばるほど、親は、袋小路に入る。子どもも
苦しむ。


 ●強化の原理

子どもが、何かの行動をしたとする。そのとき、その行動について、何か、よいことが起きたと
する。ほめられるとか、ほうびがもらえるとか。あるいは心地よい感覚に包まれるとか。そういう
何かよいことが起こるたびに、その行動は、ますます強化される。これを「強化の原理」という。
子どもの能力をのばすための大鉄則ということになる。


●弱化の原理

強化の原理に対して、弱化の原理がある。何か、行動をしたとき、つまずいたり、失敗したり、
叱られたりすると、子どもは、やる気をなくしたり、今度は、その行動を避けるようになる。これ
を弱化の原理という。子どもにもよるし、ケースにもよるが、一度弱化の原理が働くようになる
と、学習効果は、著しく落ちるようになる。


●内面化
子どもは成長とともに、身長がのび、体重が増加する。これを外面化というのに対して、心の
発達を、内面化という。その内面化は、(1)他者との共鳴性(自己中心性からの脱却)、(2)自
己管理能力、(3)良好な人間関係をみるとよい(EQ論)。ほかに道徳規範や倫理観の発達、
社会規範や、善悪の判断力などを、ふくめる。心理学の世界では、こうした発達を総称して、
「しつけ」という。


●子どもの意欲

子どもは、親、とくに母親の意欲を見ながら、自分の意欲を育てる。一般論として、意欲的な母
親の子どもは、意欲的になる。そうでない母親の子どもは、そうでない。ただし、母親が意欲的
過ぎるのも、よくない。昔から、『ハリキリママのションボリ息子』と言われる。とくに子どもに対し
ては、ほどよい親であることが望ましい。任すところは子どもに任せ、一歩退きながら、暖かい
無視を繰りかえす。それが子育てのコツということになる。


●ほどよい目標

過負担、過剰期待ほど、子どもを苦しめるものはない。そればかりではない。自信喪失から、
やる気をなくしてしまうこともある。仮に一時的にうまくいっても、オーバーヒート現象(燃え尽き
症候群、荷卸し症候群)に襲われることもある。子どもにとって重要なことは、達成感。ある程
度がんばったところで、「できた!」という喜びが、子どもを伸ばす。子どもには、ほどよい目標
をもたせるようにする。

(補足)

●負担は少しずつ減らす

+++++++++++++++

子どもに課負担による症状が
見られると、親は、あわてて
負担を減らそうとする。

そのときのコツが、これ。

『負担は、少しずつ、減らす』。

+++++++++++++++

 ときに子どもは、オーバーヒートする。子どもはまだ後先のことがわからないから、そのときど
きで、あまり考えないで、「やる」とか、「やりたい」とか言う。しかしあまりそういう言葉は信じな
いほうがよい。子どもが、音楽教室などへ行くのをしぶったりすると、「あんたが行くと言ったか
らでしょ。約束を守りなさい」と叱っている親を、よく見かける。が、それは酷というもの。

 で、慢性的な過負担がつづくと、やがて子どもの心はゆがむ。ひどいばあいには、バーントア
ウトする。症状としては、気が弱くなる、ふさぎ込む、意欲の減退、朝起きられない、自責の念
が強くなる、自信がなくなるなどの症状のほか、それが進むと、強い虚脱感と疲労感を訴える
ようになるなどが、ある。もっともこれは重症なケースだが、子どもは、そのときどきにおいて、
ここに書いたような症状を薄めたような様子を見せることがある。そういうときのコツがこれ、
『負担は、少しずつ減らす』。

 たとえば今、2つ、3つ程度なら、おけいこ塾をかけもちしている子どもは、いくらでもいる。音
楽教室に体操教室、英会話などなど。が、体の調子が悪かったりして、1つのリズムがおかしく
なると、それが影響して、生活全体のリズムを狂わせてしまうことがある。そういうとき親は、あ
わててすべてを、一度にやめさせてしまったりする。A君(小二)がそうだった。

 A君は、もともと軽いチックがあったが、それがひどいものもらいになってしまった。そこで眼
科へ連れていくと、ドクターが、「過負担が原因です。塾をやめさせなさい」と。そこで親は、そ
れまで行っていた塾を、すべてやめさせてしまった。とたん、A君には、無気力症状が出てき
た。学校から帰ってきても、ボーッとしているだけ。反応そのものが鈍くなってしまった。

子どものばあい、突然、負担を大きくするのもよくないが、突然、少なくするのもよくない。こうい
うケースでは、少しずつ負担を減らすのがよい。おけいこごとのようなものについても、様子を
みながら、少しずつふやす。ひとつのおけいこが、うまく定着したのを見届けてから、つぎのお
けいこをふやすというように、である。そして減らすときも、同じように数か月をかけて、徐々に
減らす。でないと、たいていのばあい、立ちなおりができなくなってしまう。

 A君のケースでは、そのあと、無気力症状が、1年近くもつづいてしまった。もし負担を徐々に
減らしていれば、もっと回復は早かったかもしれない。さらにしばらくして、こんなこともあった。

以前のような子どもらしい活発さをA君が取り戻したとき、親が、「もう一度……」と、音楽教室
へ入れようとしたことがある。が、それについては、今度はA君は狂人のようになって暴れ、そ
れに抵抗したという。もちろんそのため、A君は、勉強全体から遠ざかってしまった。今も、も
う、それから数年になるが、遠ざかったままである。

 子どもというのは、一見タフに見えるが、その心は、ガラス玉のようにデリケート。そしてこわ
れるときは、簡単にこわれる。もしそれがわからなければ、あなた自身はどうなのか。あるいは
どうだったかを頭の中に思い浮かべてみるとよい。あるいはあなたならできるか、でもよい。た
いていその答は、「ノー」である。


(注※、子どもの離別体験)

●子どものうつ病

+++++++++++++++++

うつ病の素因(遠因)は、満5歳から
10歳ごろまでに、つくられるという。

しかもその主なる原因は、離別体験だ
という。

つまり幼少期に親と離別体験を経験した
子どもほど、のちにおとなになって
から、うつ病(抑うつ状態)に
なりやすいということがわかって
いる。

もし今、あなたがうつ病、もしくは
うつ病的な傾向があるなら、まず、
自分の過去をのぞいてみよう。

それがあなたの心を守る第一歩となる。

++++++++++++++++

●幼少期の離別体験

 児童期の喪失体験が、子どもの抑うつ状態と、深く関係しているという(社会精神医学、7;1
14―118)。

 いわく「10歳以前の両親のいずれかと死別体験、もしくは、分離体験という喪失体験が、正
常対象群(9%)に対して、患者群(39%)に有意の差をもって多く認められた。

 しかし抑うつ状態の診断下位群、抑うつ状態の臨床結果とは特異な所見を得られなかった。

 さらに5〜10歳までが、喪失体験が抑うつ状態の素因を形成するための臨界期であろうと
推察した」と。

 わかりやすく言うと、こうなる。

10歳以前に、両親のいずれかと死別、もしくは分離体験をした子どもほど、のちにおとのなに
なってから、抑うつ状態になりやすいということ。

 同じような報告は、イギリスのバーミンガム病院でも、報告されている(精神医学、28;387
〜393、1986)。

 精神障害のある39人の患者について調べたところ、「15歳以前で、12か月以上の離別体
験をもった人」は、そうでない人よりも、明らかに関連性があることがわかったという。

 しかもこの報告で、興味深いのは、異性の親(男児であれば、母親、女児であれば、父親)と
の離別体験をもった人ほど、「有意な差」が見られたという。

 さらに報告書は、こう書いている。

 「死別体験は家族歴の有無と、有意の関連を呈さなかったが、離別体験は家族歴の有無と
有意(exact probability test, p=0.026)の関連をもち、この傾向は、離別の対象が異性の親で
ある際に強いものであった。

 異性親からの離別を体験したものは、家族歴を有する20人のうち、7名(35%)であるのに
対して、家族歴を有さないもの19名では、皆無(0%)であった。

 このことから、うつ病発症に関与していると考えられる幼少期の離別体験は、一部には、家
族員の精神疾患から発生したものである可能性が示された」(北村俊則)と。

 以上を、わかりやすくまとめると、こうなる。

(1)10歳以前に親との死別体験や離別体験をもった人ほど、うつ病になりやすい。
(2)異性の親との死別体験や離別体験をもった人ほど、うつ病になりやすい。
(3)家族のだれかに精神疾患があった人ほど、うつ病になりやすい。

 かなり乱暴なまとめ方なので、誤解を招く心配もないわけではないが、おおざっぱに言えば、
そういうことになる。そしてこうした調査報告を、裏から読むと、こうなる。

(1)10歳以前に、子どもに、離別体験を経験させるのは、避けたほうがよい、と。

 しかし実際には、たとえば親の離婚問題を例にあげて考えてみると、離婚(離別)そのものが
子どもに影響を与えるというよりは、それにいたる家庭内騒動が、子どもに影響を与えるとみ
るべきである。バーミンガム病院での報告書にも、「死別体験は家族歴の有無と、有意の関連
を呈さなかった」とある。

 解釈のしかたにも、いろいろあるが、死別のばあいは、離婚騒動で起きるような家庭内騒動
は、起きない。

 だから離婚するにしても、(それぞれの人たちは、やむにやまれない理由があって離婚する
ので)、子どもとは無縁の世界で、話を進めるのがよいということになる。子どもの目の前で、
はげしい夫婦げんかをするなどという行為は、タブーと考えてよい。

 また、この調査結果は、もうひとつ重要なことを私たちに教えている。

 もし今、あなたがうつ病、もしくはうつ病的な傾向を示しているなら、その原因は、ひょっとした
ら、あなた自身の幼少期に起因しているかもしれないということ。(うつ病の原因が、すべて幼
少期にあると言っているのではない。誤解のないように!)

 そこであなたは、自分の過去を、冷静に、かつ客観的に見つめなおしてみる。

 しかし問題は、あなた自身が、そういう過去を経験したということではなく、そういう過去があ
ることに気がつかないまま、そういう過去の虜(とりこ)となって、その過去に操られることであ
る。

 そこでまず、自分の過去を知る。

 もしそのとき、あなたが心豊かで恵まれた環境の中で、育てられたというのであれば、それは
それとして結構なことである。が、反対に、ここでいうような不幸な体験(親との死別体験や離
別体験)を経験しているなら、あなたの心は、何らかの形で、かなりキズついているとみてよ
い。

 しかしそれがこの問題を克服する第一歩である。

 自分の過去を知り、自分の心のキズに気がつけば、あとは、時間が解決してくれる。5年とか
10年とか、あるいはもっと時間がかかるかもしれない。が、あとは、時間に任せればよい。少
なくとも、自分の(心の敵)がわかれば、恐れることはない。不必要に悩んだり、苦しんだりする
こともない。

 うつ病にかぎらず、心の問題というのは、そういうものである。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 子ど
ものうつ病 鬱病 子供のうつ病 子供の鬱病 離別体験 心の風邪)






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